機材ミラーレス化 〜EOS R5導入〜
ミラーレスカメラの導入によってカメラ業界が劇的に変化している現在ですが、私も機材を時代変化に乗る形で買い換えることになりました。
一眼レフ大手と呼ばれていたCanonとNikonの時代が、ミラーレスの登場によってSONYがリードし、Canonが追いかける、Nikonは致命傷を負ったという時代になっています。
ミラーレスも現在発展途上な部分が多く、原理的にも従来一眼レフと比べると弱い部分もあるのですが、今後のカメラ業界の動向から従来一眼レフの生産は縮小傾向になるだろうと踏んでの導入です。
前置きが長くなりましたが、今回導入しましたEOS R5のファーストインプレッションと、ミラーレスの特性とどう付き合うべきなのかを紹介していきます。
※用語※ (ミラーレスは一眼レフなのかコンデジの一種なのかなんか微妙なためここではこう定義)
"一眼レフ" = 従来一眼レフ、ミラーがある
"ミラーレス" = ミラーレスカメラ、ミラーがない
☆☆以下本文☆☆
まずR5導入にあたって多少はミラーレス導入の実験台になってやろうという意思もあったため、導入前に気になっていた点を並べていきます。
まだ導入から浅いので実証していない部分もありますが、その部分については原理的な話で済ませていきます。
☆ミラーレス導入前、気になっていた点☆
①電子シャッターによるローリングシャッター歪み
私の中でミラーレス導入に踏ん張りがつかなかった最大の理由がこれになります。メカシャッターが搭載のミラーレスであれば使い物にならなければメカシャッターを使えばいいということになるのですがそれだと一眼レフと変わらないなと…
比較画像 (上は電子、下はメカ)
こちらは真っ先に確認した点です。この区間の速度は分からないのですが駅発車後すぐでカーブ区間なので3桁km/hは出てないのかな…?
比較しやすく平たい顔族の3000が来てくれたので載せます。真横はしょうがないにしても斜め構図なら電子シャッターも使えるかなと導入前には思っていましたが、残念これは私は使いません。おそらく鉄道写真では面縦くらいでしか電子シャッターは使えないのではないでしょうか。(面縦も高速だと下が膨れる写真になるのかも…)
電子シャッターで歪みが出る理由はセンサーの構造にあります。
一般的にデジタルカメラで使われるCMOSは受光した情報をセンサー全体で一括スキャンするのではなく、ラインごとに段々にスキャンしています。センサーやカメラの向きによるのでここでは上から下に順にスキャンするCMOSを考えます。
なぜこんなデメリットのあるCMOSをカメラのセンサーに使っているかと言うと、価格面や省電力性の点で一般向けの小型カメラ向きであるからです。
電子シャッターで歪みが生じ、メカシャッターでは歪みが生じないというのは厳密には間違いで、メカシャッター(一眼レフでよく使われるフォーカルプレーンシャッター)でもセンサーがCMOSである以上歪みは発生します。
まずメカシャッターの受光の仕組みですが、先幕を解放→後幕を閉じる、このタイムラグでシャッタースピード(以下SS)を実現しています。ただ高速SSではこれら2枚の幕を動作させる速度には限界がある(SS1/1000でフルサイズセンサーであれば縦の短辺24mmを1/1000 sで駆け抜けることが求められるため、v=24[mm]/(1/1000 [s])=86.4km/h)ため、ある程度のSS以上では先幕と後幕を同時に動かし、2幕のスリットを調整することでSSを実現しています。
このある程度のSSというのは、カメラをレンズなしの状態で各SSにてシャッターを切っていくと幕個別モードとスリットモードがどこで切り替わるのがわかります。実験にはカメラを犠牲にするか無塵室を用意する必要があるのでネットの情報ですが1/300程度のようです。
つまり、CMOSのスキャン速度が遅くても、シャッター幕が1/300 s程度で駆け抜けてくれるため、メカシャッターでは歪みが少なくなることになります。
1/300 sのSSと言うと新幹線や旅客機を撮る人からすると遅すぎるSSですが、300km/hで運動する物体が1/300 sで進む距離は x=300[km/h]×1/300 [s]≒0.28[m]
約30cmとなるのである程度離れていれば写真としては気にならないですね。
対し電子シャッターではスキャン時間が早くないらしく、(1/数十 sらしい?)上から下にスキャンしている間に像が移動してしまうと歪みとして現れるわけです。
このスキャン時間が遅いのはセンサーで得たデータの解析処理に時間を要するためなのか詳しいことがよくわかりませんが、このスキャン時間を1/200-300 s程度にしないとメカ廃止は現実的でないことになります。NikonはZ9でメカシャッターを廃止してきましたがこれを実現できたのか、もし満足できない性能であればいよいよNikonは客がいなくなる状況ですので注目ですね。
②メカシャッターによるレリーズラグ
これはミラーレスの原理上起きてしまうものです。
ミラーレスのファインダー像は映像のため、センサーは常に露光している状態になります。
つまり、メカシャッターによって撮影する場合は一度先幕を閉じるステップが必要になります。
一眼レフではファインダー像はミラーで反射された実際の光ですから先幕は開いておく必要がないわけです。
③電子先幕シャッターによる露出ムラ、ボケ欠け
電子先幕とメカ後幕ではセンサーからの距離に違いがあり、ピントの合っていない光がセンサーに露光される時間にタイムラグが生じることにより発生する現象。
電子幕はセンサーからの距離が+0であるのに対し、メカ幕はセンサー表面に作ることができない(+0の地点に作るとセンサーに接触しながら動作するため)ことから+いくらかの距離がある。
未検証ですが鉄道写真では後方に映り込んだ後方のピントの合っていない信号機の灯火に影響が出そう。
これはハイブリッドシャッターによる弊害ですね。カメラ機構の対策としてはメカ幕の位置をセンサーに充分近づける(とはい+0は不可能なため完全には対策不可)
④EFレンズをアダプタで使用できるか
現状使用したのは、
純正Canon EF24-105 F4
Σ 150-600C
マウントアダプターEOS-Rにてどちらも満足な動作をしてくれました。
⑤電池バカ食い
これもミラーレスの原理上、ファインダーにもモニターにも表示する場合には電気を食います。一眼レフではファインダーの方は撮影データ部分以外は食わないですからね。
R5の場合は撮影データを表示する肩液晶があるので全部で3パネル表示することになります。
とはいえ全部が常点灯ではなく、ファインダーは覗いた時にだけ表示(ファインダー下部のセンサーを塞ぐことにより覗いた判定→表示)、モニターはOFF可能、肩液晶は常時動作のようですがあまり食うモニターではないと思われます。
個人的に気になったのが肩液晶が電源OFF時にも消えないこと。マニュアルのMなどモードが表示され、有機ELではないため無表示部分も点灯しています。有機ELではないディスプレイのスマホを考えるとわかると思いますが黒でも黒を表現するために発光しています。あの状態を考えるとわかると思います。
肩液晶を消すにはバッテリーを抜くしかなさそうなので移動時にはバッテリーを抜くのがいいかもしれません。そもそも電源を抜くというのはバッテリー持ちをよくする方法の一つでもありますので少しでも持ちをよくしたいならば実践してもいいかもしれません。
☆シャッター方式の使い分け
最後に3種類のシャッター方式のメリットデメリットを挙げて使い時・使ってはいけない時を考えていきます。
- 電子シャッター
メリット
機構劣化がなく長寿命
超高速シャッタースピードが可能
デメリット
高速動体でのローリングシャッター歪みの発生
→
使い時
止まっている物の撮影(風景等)
動体が映っているが歪みが許容できるレベルに小さい
使ってはいけない時
高速動体の撮影
- 電子先幕シャッター
メリット
メカシャッターをレリーズラグなしで使える
デメリット
先後幕の位置の違いによる露光ムラ
→
使い時
全体がピント範囲に収まっている写真(壁面等)
高速動体の撮影(メカシャッターを使いたいがレリーズラグが許容できない時)
使ってはいけない時
ピンボケを表現とする写真
- フルメカシャッター
メリット
ローリングシャッターゆがみの小ささ
デメリット
レリーズラグ
機構劣化
→
使い時
高速動体の撮影
使ってはいけない時
特になし、だが機構劣化を避けるためには電子で良いときは電子を使うべき